チアダンスの本番の途中でポニーテールが下がってくるのは、結び方が下手だからではありません。
レッスンのお迎えに行くと、朝に結んだはずの髪が横へ流れて、毛先が顔にかかっている。家を出たときは、きちんとまとまっていたはずです。舞台の上では、それが曲の後半にやってきます。踊りを見ていたいのに、目が毛先のほうへ引っぱられます。
崩れる子と崩れない子の差は、引っぱる強さではありません。差がつくのは結ぶ順番のほうです。髪を上下に分けてから結ぶ。この順番にするだけで、根元の残り方が変わります。
同じ結び方なのに、本番だけ崩れるのはどうして?

ふだんの練習では平気なのに、本番だけ崩れる。いちばん大きいのは汗です。緊張と照明の熱で、練習のときよりずっと汗をかきます。生え際や地肌が湿ると、朝きっちり締めた根元がじわりとゆるみます。
次に髪質。まっすぐでさらさらした髪はゴムがすべりやすく、毛量が多い子は根元にかかる重みが増えます。同じ結び方でも、下がってくる速さは子によって違うものです。髪質のほうは変えられないので、結ぶ手順で差を埋めます。
崩れないポニーテールは、結ぶ前の順番で決まります
初めて作る日は、二十分ほどみておくと慌てません。何度か作れば、その半分くらいで収まります。
乾かしてから、表面だけ湿らせます
結ぶ前に、生え際と地肌が乾いているかを確かめます。汗をかきやすい子はここが肝心で、ドライヤーの冷風を最後に当てると根元が締まります。汗じみが気になる日は、制汗シートで軽くふき取ってから始めます。
地肌が乾いたら、次は髪の表面です。乾いたまま結ぶと、表面がぱさついてゴムの中で毛が動きます。霧吹きでひと吹き、なければ手のひらを濡らして表面をなでるだけでも足ります。びしょ濡れにはせず、触ってしっとりする程度で止めます。
そのあとワックスです。小豆ひとつぶくらいを手のひらでよくのばしてから、髪の表面から中ほどまでなじませます。一度にたくさんつけると重くなって、かえって落ちてきます。足りなければ後から足せます。
髪が細くてすべる子ほど、この湿らせとワックスが効きます。表面がすべすべのままだとゴムが移動してしまうので、少しだけ引っかかりを作ってあげるイメージです。
なじませたら、目の細かいクシで根元から毛先へ通します。ここで表面のぼこぼこを消しておくと、結んだあとの見え方がきれいです。
結ぶ高さって、どこがいいの?
目安は、耳の上のラインより高い位置です。耳の上と頭のてっぺんの中間あたりを狙うと、チアらしい見え方にもなります。
頭は、てっぺんに近いところほど動きが小さく、下にいくほど大きく揺れます。うなじに近い低い位置で結ぶと、同じジャンプでも毛先が大きく振られ、そのたびに根元が引っぱられます。高い位置は、動きが結び目に伝わりにくい場所なのです。
チアやキッズダンスでポニーテールが選ばれることが多いのも、ここに理由があります。揺れが散りやすく、客席から表情も見えます。
ただし、高すぎると頭皮が引っぱられて本人が痛がります。結ぶ場所に手を当てて、「ここ、痛くない?」と一度聞いてから締めます。
上下に分けて結ぶと、根元が安定します

ここが、この結び方でいちばん大事なところです。使うゴムは二本。上半分と下半分を、別々のゴムで結びます。
まず、両耳の上をまっすぐつないだラインを境にして、髪を上半分と下半分に分けます。手ぐしで大まかに分けたあと、クシの柄で境目をなぞると、まっすぐな線が出ます。上半分は落ちてこないよう、クリップか大きめのピンで一度留めておくと手が空きます。
下半分を先に結びます。決めた高さのすぐ下でひとつにまとめ、一本目のゴムで留めます。ゴムは三周ほど巻いて、最後は根元を手で押さえながら締めます。
次が上半分です。留めておいたクリップを外し、うしろへ持ってきます。ここで下の毛束と一緒に結んでしまわないのがポイント。上半分だけを二本目のゴムで結びます。
結ぶ位置は、下の結び目のすぐ上。上の結び目が下の結び目に重なるように置くと、二本のゴムは毛束に隠れて、正面からは一本のポニーテールに見えます。上半分の根元をクシで軽く整えてから重ねると、表面がなめらかに仕上がります。
ゴムは二本、上と下を別々に。こうすると髪全体の重さが上下二か所に分かれ、ひとつにまとめて力いっぱい結んだときより、根元一点にかかる負担が減ります。強く引っぱらずに持たせる、というのはこういうことです。
仕上げに、上下のゴムをまたぐようにピンを二本、向かい合わせに交差させて刺しておくと、二つの結び目がずれにくくなります。
初めて作るなら、本番の前に一度、家で通しでやってみてください。分け目の高さもゴムの締め具合も、一度手が覚えていると当日に迷いません。
毛先とおくれ毛を片づけて、最後に頭を振ります
はみ出した毛先は、手に残ったワックスでなでつけます。それでも浮くところだけ、短いピンで留めます。
ハードスプレーは、腕を伸ばしたくらいの距離から全体に。近づけすぎると一か所だけ固まって、白く粉が残ることがあります。
できあがったら、確かめ方がひとつあります。結び目を指でつまんで、上へ軽く押してみてください。根元がついてこないで、地肌との間にゆるみが出るようなら、締め直しの合図です。
最後に、本人に頭を左右へ大きく振ってもらいます。ふわりと落ちてくる毛束があれば、そこが本番でいちばん先に崩れる場所。朝のうちに見つかれば、直すのはすぐです。
時間がない朝は、ここだけ残します
下の子の支度と重なって、ばたばたのまま出る朝もあります。そんな日は、湿らせて、上下に分けて、二回結んで、スプレー。この流れだけ残せば形になります。
省いていいのは、編み込みや飾りつけのほうです。逆に、生え際を乾かすことと二本のゴムで分けて結ぶことは飛ばさないでください。ここを抜くと、たいてい会場で結び直すことになります。
そろえる道具は、家にあるものでほとんど足ります
これだけあれば結べます
まず、目の細かいクシがひとつ。表面をなめらかに整えるのと、分け目をまっすぐ取るのに使います。
ワックスはハードタイプを選びます。まとまりにくい毛先やおくれ毛が落ち着きます。仕上げのハードスプレーは、動いたあとの残り方が変わるので、できればそろえておきたいところです。子どもに使うものは低刺激タイプにしておくと安心です。
ゴムは、布で編んである太めのものを三本。売り場で迷ったら、表面に凹凸があってすべりにくいほうを選びます。シリコンのゴムは止まりがいい反面、細くて食い込むので、外すときに痛がる子もいます。細いゴムは本番の途中で切れることがあるので、予備の小さいゴムも一緒に持たせます。
ピンは、なくす前提で多めに。会場の床で一本、車の中で一本。気づくと手元に残っていません。
足りないものは、こう代用できます
クシがなければ、普段使っているブラシの目が細かい側で代用できます。ワックスがない日は、少量の水で湿らせてからしっかり乾かすだけでも、表面のまとまりは変わります。
スプレーが手元にないときは、結び目のピンを一本増やして押さえます。前の晩に気づいたなら、帰り道にハードスプレーとピンだけ足しておけば十分です。
編み込み、お団子、ボブ。うちの子にはどれが向いてる?

選ぶ目印は、髪の長さと毛量、それと結ぶ側の手の慣れです。肩より短ければ編み込みは扱いにくく、毛量が多い子はお団子が重くなります。慣れないうちは、上下に分けたポニーテールがいちばん崩れにくく、直すのも簡単です。
編み込みやくるりんぱは、見た目が華やかなぶん、持ちはポニーテールより落ちます。当日にぶっつけで挑まず、一度家で通してみてから持ち込むほうが安心です。
編み込みは、途中がゆるむとそこからほどけます
編み込みは根元から細かく編んでいくぶん、途中で一か所ゆるむと、そこから全体が流れます。指先で毛束をしっかりつまみ、編み目のあいだをあけずに詰めて編み進めると、ゆるみにくくなります。編み終わりは、毛先ぎりぎりまで編んでからゴムで留めます。
全部を編むのが難しければ、トップの一部だけ編んで、あとは上下に分けたポニーテールにつなげる形でも十分に見栄えがします。
くるりんぱは、輪の締め具合で決まります
くるりんぱは、編み込みが苦手でも取り入れやすいアレンジです。ただし、通す輪の部分がゆるいと、動いているうちに全体が下がってきます。
結び目をきちんと締めてから通し、通したあとに毛束を左右へ引いて根元を詰め直す。この一手間で持ちが変わります。仕上げに軽くスプレーをかけておきます。
お団子(シニヨン)は、土台を作ってから巻きつけます
お団子は華やかな反面、毛量が多い子ほど重みで下がりやすい形です。先にゴムでしっかり土台を作り、そこへ毛先を巻きつけていきます。ピンは中心から外へ向けて何本か刺すと、一方向に倒れにくくなります。
三つ編み二本やハーフアップは、揺れ方が変わります
三つ編みを二本にするときは、分け目を鼻の中心からまっすぐ後ろへ取ります。左右の高さがそろっていないと、正面から見たときに意外と目立つものです。
ハーフアップは涼しげに見えますが、下ろした髪が汗で顔や首に張りつきます。舞台に立つ日は、上側だけでも二本のゴムに分けて結んでおきます。下ろす部分は毛先を軽くまとめておくと、動いたあとも顔が見えます。
ボブや短い髪なら、無理に結ばなくて大丈夫です
ボブや短い髪の場合、そもそも結べる長さがないこともあります。無理にまとめず、サイドをピンで留めて顔まわりをすっきりさせるだけで十分です。前髪はワックスとピンで横に流しておくと、動いても表情が隠れません。並んだときの統一感は、顔まわりが出ているかどうかで変わります。
伸びてきて耳の下あたりまで届いたら、下半分だけを結ぶところから始められます。そこから少しずつ、上半分を重ねる形に広げていくと無理がありません。
本番の前の日と当日の朝、どこまでやっておく?
前の晩に、道具と前髪を決めておきます
ゴム、ピン、ワックス、スプレーは、衣装やポンポンと同じ袋にまとめておきます。朝に探すものがひとつ減るだけで、家を出るまでの空気が変わります。
ポンポンを手作りする場合は、材料選びから本数・巻き方までの手順を参考に、こちらも前日までに用意しておくと安心です。
前髪も、前の晩に決めておく組です。全部おろす、サイドに流す、ピンで上げる。どれにするかを先に決めておくと、朝の判断がひとつ減ります。おろす場合は汗でおでこに張りつくので、ワックスをごく少量なじませてからスプレーで固定します。
朝は、会場では直すだけの状態まで作ります
発表会の朝は、衣装や持ち物の確認もあって、髪型にかけられる時間はごくわずかです。家で仕上げてから向かうと、当日がぐっと楽になります。
目安は、会場ではおくれ毛とスプレーを直すだけで済む状態です。全部を会場でやろうとすると、鏡の順番待ちが重なって、気持ちにも余裕がなくなります。移動中につぶれるのが心配なら、背もたれに結び目が当たらないよう、浅めに座らせておきます。
出番の直前と、途中で下がってきたときはどうする?
直前に見るのは、おくれ毛と結び目のゆるみだけで十分です。結び目を指でつまんで押し上げ、根元がついてこなければそのままで大丈夫。
途中で下がってきても、全部ほどいて結び直す必要はありません。下がった結び目の上からピンを二本、交差させて刺し、スプレーをひと吹き。それで出番まで持つことがほとんどです。毛先だけほどけたときは、小さいゴムで結び直します。
ピン数本と小さいゴムを入れた小袋を、本人のバッグに忍ばせておくと、舞台袖でも自分で直せます。
きつく結ぶほど崩れない、というわけでもないんです

痛がらない強さで、どうやって持たせる?
崩れないようにと、つい力いっぱい引っぱりたくなります。でも、きつさと崩れにくさは比例しません。
持たせているのは、揺れが伝わりにくい高さと、上下に分けて散らした重さのほうです。そこに毛先の処理が加われば、力任せに引っぱらなくても最後まで残ります。
反対に、きつく結びすぎるとどうなるか。本人が気になって、待ち時間のあいだに何度も触ります。触るほどゆるむ。結局、そこから崩れていきます。
力が入りすぎると、踊りのほうも小さくなります
これは髪だけの話ではありません。本人が緊張して肩に力が入ったまま踊ると、腕が伸びきらなかったり、ジャンプが低くなったりします。力を入れたところほど、思ったように動かない。髪と同じです。
肩の力がふっと抜けたときのほうが、同じ振りでも大きく見えた。そう話す保護者もいます。
おでこを出すと、表情まで見えます
顔まわりをすっきりさせるのは、崩れ対策だけが理由ではありません。客席から表情が見えると、踊りそのものの印象が変わります。発表会のメイクの濃さにも同じことが言えて、髪もメイクも、顔を見せるための仕上げです。
よくある質問
本番中に崩れてきたら、どこを直せばいいですか?
結び直すより、下がった結び目の上にピンを交差させて刺すほうが早く、見た目も戻ります。おくれ毛はスプレーをひと吹きしてなでつければ落ち着きます。毛先だけほどけた場合は、小さいゴムで結び直します。
発表会の髪型は、美容室に頼んだほうがいいですか?
頼むのもひとつの方法です。ただ、集合時間が早い日は朝の予約が取りにくく、会場までの移動でおくれ毛が出ることもあります。頼む場合も、家でひとつ結べる形を覚えておくと、当日に下がってきたときに自分の手で直せます。
チームでリボンや髪飾りが決まっている場合は、どうすればいいですか?
リボンやヘアアクセサリーの色・形が指定されている場合は、結び目の位置に重ねて留めると統一感が出ます。ゴムの上からリボンを巻き、裏側でピンを刺して固定すると、動いてもずれません。指定があるかどうかは、当日ではなく事前に先生へ確認しておくと安心です。
前の日の夜に結んでおいてもいいですか?
寝ている間につぶれたり、変なくせがついたりするので、結ぶのは当日の朝がおすすめです。前の晩にできるのは、道具をまとめておくことと、前髪をどうするか決めておくところまでです。
本番の朝は、この四つを思い出せば形になります
地肌を乾かしてから表面を湿らせる。両耳の上のラインで上下に分ける。ゴム二本で別々に結んで重ねる。最後にスプレー。ここまでできていれば、あとは会場で直すだけです。編み込みや飾りつけは、手が空いた日のおまけくらいに考えておくと気が楽になります。
髪が決まると、次に気になるのは踊りのほうかもしれません。うちの子だけ動きが硬く見える気がする。そう感じたことがあれば、チアの体の使い方をまとめた記事が入口になります。

