発表会の練習動画を見返していて、ふと気づいたことはないでしょうか。ほかの子はキックのときに足がスッと上まで伸びているのに、うちの子だけ途中で止まっているように見える。本人も気にしているのか、家でも脚を振り上げる練習をくり返している。半年、一年とチアを続けているお子さんの様子を見ていると、こういう場面に出会うことがあります。
キックが上がらないのは、頑張っていないからではありません。むしろ頑張っている子ほど、足の高さで伸び悩むことがあります。何が変わると上がるようになるのか、順を追って書いてみます。
力いっぱい振り上げるほど、足は途中で止まる

キックで足を高く上げようとするとき、多くの子は脚の力で振り上げようとします。太ももに力をこめて、勢いよく上げる。ところが力を入れれば入れるほど、ある高さでピタッと止まってしまうことがあります。
脚を強く振り上げようとすると、上げる側だけでなく、立っている軸足や上半身にも力が入ります。全身がぐっと固まった状態では、脚の付け根が動ける範囲がせまくなります。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような、そんな動き方になりやすいのです。
もうひとつよく見られるのが、足を上げるときに上体が後ろへ逃げてしまう動きです。バランスをとろうとして体が反ってしまうと、体の中心がぶれて、かえって足の高さが出にくくなります。頑張っているのに上がらないのは、力の入れどころがすれ違っているのかもしれません。
上がる子は、力ではなく別のところが違っていた
立っている足が落ち着くと、上げる足に余裕が出る

キックは、上げる足よりも先に、立っている足の状態で決まる部分があります。立っている足がぐらつかず、体の真下で静かに支えられていると、反対の足は驚くほど軽く上がっていきます。
逆に、立っている足がふらついたまま足を振り上げると、体は転ばないようにと自然にブレーキをかけます。上げる力より、この無意識のブレーキのほうが、足の高さに関係しているのかもしれません。同じ柔軟性の子でも、ここで差が出てきます。
上半身の力みが抜けると、動きがつながる
足だけを見ていると気づきにくいのですが、肩や背中がガチガチだと、脚の動きもそこで止まります。上半身がふっとゆるんでいる子は、キックのときに体全体がひとつにつながって動いていて、力が足先まで流れていきます。
部分を強くしようと頑張るより、全身の状態が先に整うと、動きがあとからついてくる。キックにかぎらず、チアの技の多くに共通して見えてくることです。
同じ子でも、日によって高さが変わるのはなぜ
きのうは上まで伸びていたのに、きょうは低い。同じお子さんでも、キックの高さが日によって変わることがあります。柔軟性は一日で大きく変わりませんから、その差は体のこわばり具合から来ていることが多いです。
緊張していたり、体がまだ温まっていなかったり、気持ちが乗らなかったり。そういう日は全身に力が入って、動きがかたくなります。逆に、リラックスして体が軽い日は、同じ脚でもふわりと高く上がる。高さが安定しないのは、力みの入り方が日によって変わっているサインでもあります。
うまくいかない日ほど、つい「もっと上げなさい」と言いたくなりますよね。けれど、そこで力を足すと、かえって固まってしまうことがあります。高さそのものより、体がゆるんで動けているかどうかを見てあげると、声のかけ方が変わってきます。
「力を抜く」は、言葉で追いかけるほど遠くなる
ここまで読んで、「じゃあ力を抜けばいいのね」と思われたかもしれません。ところが、この「力が抜けて整った状態」は、言葉で説明されて頭で追いかけるほど、かえってつかみにくいものです。
「肩の力を抜いて」と言われて、抜こうと意識したそのときに、別のところに力が入ってしまう。大人でも経験があるはずです。力みが抜けた状態というのは、教わって理解するものというより、一度自分の体で味わってしまうと「ああ、これか」とわかるものに近いのです。
だからこそ、家で言葉を頼りに再現しようとするより、整った状態を一度体で感じてみるほうが、近道になることがあります。お子さんが「なんだ、こんなに軽いんだ」と感じられたら、そこからの練習の意味が変わってきます。
よくある質問
キックが高く上がらないのは、体がかたいからですか?
柔軟性も関係しますが、それだけではないことが多いです。開脚が同じくらいの子でも、キックの高さに差が出ることはよくあります。立っている足の落ち着きや、上半身の力みの有無で、同じ体でも上がり方が変わってくるためです。柔軟だけを増やしても伸び悩むときは、体全体の使い方に目を向けてみると、変化が出ることがあります。
家で足を上げる練習をたくさんさせたほうがいいですか?
回数を増やすこと自体は悪くありませんが、力いっぱい振り上げる練習をくり返すと、力んだ動き方のほうが体に定着してしまうこともあります。数をこなす前に、まず力みが抜けた状態でどう動くのかを体で知っておくと、その後の練習が生きてきます。
キックの高さは、脚の力だけで決まるものではありません。全身の力みがほどけて整った状態を、お子さんが一度体で感じられると、足の上がり方が変わってくることがあります。ただ、この感覚は言葉だけでは伝わりにくいものです。体を動かしながら、力みが抜けて足が軽くなる感覚をその場で確かめてもらう場です。キックの伸びが気になっている方は、お子さんと一度のぞいてみてください。
足が軽くなる体の使い方を体験する

